東洋種苗園『種苗案内』大正2年春季号

 東京府渋谷町(現・東京都渋谷区)にあった東洋種苗園のカタログです。明治44年発行の地図「東京府豊多摩郡渋谷町全図」で、大正2年当時東洋種苗園のあった上渋谷町裏24番地を見ると、非常に広いエリアが同じ24番地に指定されていて、写真などがない限り東洋種苗園の場所を細かく特定するのは困難です。大雑把に推測すれば、おおよそ現在の宮下公園のあたりと思われます。24番地のすぐ隣には東京興農園(東京興農園のカタログは近々紹介する予定です)の農場があり、また、少し離れた常磐松には御料乳牛場と私立東京農学校(現・東京農業大学)がありました。渋谷に種苗会社があったというのはへんな感じがしますが、当時の状況をふまえると全く不思議ではありません。

 本資料の1ページ目を見ると当時の東洋種苗園長が河村九淵であることがわかります。河村九淵は熊本県立熊本農業高校の初代校長をつとめた人物で、私立東京農学校でも講師をつとめています。また、農業関係の技術書を多く執筆しており、著作のうち『蔬菜栽培法』(1912)や『柑橘栽培法』(1913)などいくつかは東洋種苗園から出版されています。書籍の出版は東洋種苗園に限らず、他の種苗会社も栽培法などの技術解説書を発行していました。現在でも大手種苗メーカーは様々な書籍、定期刊行物を発行しています。

 本資料はカタログとしては形式、内容等至極一般的なものであるように思います。以下、画像データです。ページの関係上、花種子や農具等を紹介している部分を省略しています。






 本稿に関するお問い合わせはsec@kakukei-oiseed.comへお願いいたします。お返事までしばらくお時間をいただく場合がございますが、ご了承ください。 (鶴頸種苗流通プロモーション 代表 小林宙)


主な参考文献

1. 友田清彦, 「近代農学の源流(中) 「助っ人」御雇外国人たち」『実学ジャーナル』2007年11月号.

2. 東京逓信管理局(1911), 「東京府豊多摩郡渋谷町全図」, 逓信協会. (閲覧:公益財団法人特別区協議会ホームページ https://www.tokyo-23city.or.jp/chosa/tokei/kochizu/kubunchizu/choson/shibuya_kmview-zoom.html)

3. 熊本県立熊本農業高等学校ホームページ https://sh.higo.ed.jp/kumanou/

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