地元種苗店店主が守る、和多田瓜 (佐賀県唐津市)

 和多田漬瓜は佐賀・唐津の伝統野菜である。2019年までは仕入先の地元農家による採種が行われていたが、この農家が高齢を理由に引退した。そこで、長年和多田漬瓜の種子を販売してきた山下種苗店の2代目店主・山下氏が書物や農家から採種方法を学び、翌2020年より採種から販売までを一貫して手掛けている。(写真=山下氏)

 和多田漬瓜は、地元ではたんに和多田瓜と呼ばれる。マクワウリのような甘い瓜ではなく、野菜の瓜であることを明示するために種子販売時には漬瓜としているそうである。和多田瓜の栽培は一般的な漬瓜のそれに準ずるが、引退した採種農家いわく、留意点は「果実は孫つるにつける」とのことである。


 佐賀ではカリッとした食感が特徴的な瓜の酒粕漬けが好まれ、県内では来客時のお茶請けとして漬物が出される地域もある。これには佐賀の農業が関係している。佐賀は広大な平野を利用した米作りが盛んで、日本酒の蔵元も多い。酒粕漬はその製造工程でできる酒粕を利用する。県内の多久市では和多田瓜よりも表皮の緑が濃い改良佐賀青縞瓜を原料とした青しまうり漬が生産され、全国販売されている。一方、和多田瓜は、唐津市内で製造販売される「玄海漬」の原料に使われている。両品種とも古漬けにしても果肉が柔らかくならないのが特徴である。佐賀の瓜は酒粕漬と密接に関わり、長年栽培されてきた。


 山下氏は県庁の農業関連部署を定年退職後、先代から種苗店の経営を引き継いだ。経営を引き継いで5年(2023年現在)、和多田瓜の普及活動にも積極的だ。2021年には、唐津市和多田の小学校で2年生に採種体験のワークショップを実施した。その際には、子どもたちに興味を持ってもらえるように動画を制作・上映し、コロナ禍で学校にて試食ができなかったが、古漬けをお土産として渡して家庭で試食してもらった。これらの取り組みは地元ケーブルテレビで紹介されたほか、種苗業界の業界誌でも取り上げられた。


 弊社ではこの和多田漬瓜の種子を数量限定で販売いたします。ご注文は、メールにて。品種詳細はこちらから。